四十代の大台に乗ったとき、四十代は早いよ、と言われた。五十代はもっと早いと言われ、全くそれは正しかった。あと二年余で還暦(注1)だってさ。ウッソー、と若い人を真似て言ってみるだけれど、その言葉はもう使われていないそうだ。

 十歳の時の一年は全人生の十分の一だから結構長い。しかし五十七歳の一年は、五十七分の一の分量しかない。

 結局、時間の感覚は、記憶で作られている何かに比較されて、長く感じたり短く感じたりするのかも知れない。同じ大きさの太陽が中天と山祭(注2)ではまるで違って見えるように、知らず知らずのうちに、自分の記憶の総量を目盛りにして、今を測っているのだろう。

 

(注1)還暦:60歳のこと

(注2)中天と山祭:空の一番高いところと山の端の日が沈むところ

 


この文章によると、四十代より五十代はもっと早いのはなぜか。

1 四十代より五十代のほうが記憶がはっきりしなくなっているから。

2 四十代にも見えない若々しい人が五十代に見えるわけがないから。

3 四十代の一年は人生の四十分の一だが、五十代は五十分の一だから。

4 四十代よりも五十代のほうが還暦に近いから。